【うみねこ】1.not三位一体説

 

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 ばとら 「き、きさまは…

 
 安田と、紗音と、それから嘉音。
 みんな違っていいんじゃない? そんな考察です。
 
※このページには「うみねこのなく頃に」の多大なるネタバレが含まれます。
 未プレイの方はご注意ください。
 

 

ボトルメールの物語

 『うみねこのなく頃に』の物語は全て作中作である。
 ……と、最後までプレイした方ならご存じのはずです。ep1、2は真犯人(安田)が書いたボトルメール、ep3以降はそれを読んだ八城十八(戦人)が書いた二次創作、という解釈が一番妥当ではないかと思います(ep7だけは微妙なところですが)。
 
 私の提唱するnot三位一体説は、『三位一体はあくまで安田の書いたボトルメール上の設定で、当日の六軒島には音の名を持つ使用人が3人いたのではないか』というものです。3人はつまり紗音、嘉音、安田(使用人名は紗音ではない)です。
 
 ep7クレルの告白内で、安田は紗音とは別の一人の人間として描写されています。しかし、孤独や不安を抱く安田が生み出したイマジナリーフレンドが有能使用人紗音、というのが本来の読み方だと思います。当時は紗音もまたイマジナリーフレンドという考えに直ぐには思い至らず、あまり深く考えずに安田の過去を見ていました。
 三位一体説を軸にした考察をした後、ふと、考えました。
 安田の同僚の女の子”紗音”は実在の人物で、後に出てくる”嘉音”も実在の人物だったらどうなるのだろう。”安田”とは別人で。
 
 他の使用人達の会話を聞いていると、"紗音"の台詞がなくても会話が成立すること気づきます。ですが同時に、"紗音"の台詞を挟んでも会話は成立します。何も考えず素直に読めばむしろそっちのほうが自然です。
 また、"嘉音"が右代宮家に雇われたのは金蔵の死後(黄金発見後)です。金蔵が死んだ後わざわざ(金蔵の死体隠蔽の)共犯者である福音の家使用人を増やすのも不可解なので、やはり安田の人格というのが妥当でしょう。しかし見方を変えれば、あえて福音の家の使用人を増やすことで金蔵不在を悟らせにくくする、と考えれば辻褄が合うような気がします。ましてや嘉音は福音の家時代から紗音を姉と慕っていた、とのことなので蔵臼達からしても好都合ではないでしょうか。
 「家具だから」という紗音嘉音の言葉も肉体云々の問題ではなく、ごく普通に「使用人だから」という意味合いに過ぎない、と。
 
 では何故ボトルメールで三位一体設定にしたのか。
 その前にまず、あの日戦人が「シーユーアゲイン」と約束をしたのは紗音か、安田かという点について考えます。
 戦人は台詞の中で明確に"紗音ちゃん"と呼んでいますが、これもクレルの脚色かもしれません。
 熊沢からミステリー本を借りて傾倒していく……という過程は、たとえ紗音と安田が別人でも二人とも同じ趣味ならばなんとかなりそうです。
 
【約束したのは安田】
 憧れの戦人と約束した安田は、作中で語られる通り自分に試練だと言い聞かせながら時を待ちます。そして、自分宛てに来ない手紙でついに心が折れます。戦人こんちくしょうと思いながらもどこかで思いを捨てきれない安田は空想の中の魔女に恋の芽を託し、表面上は気持ちを切り替えていくことになります。
 
【約束したのは紗音】★
 紗音と戦人の約束後、その恋を羨みながらも応援していた安田。そんな彼女は例の手紙の件で失恋に嘆き悲しむ紗音から恋の目を預かることになります。魔法的な云々ではなく、女の子同士のおまじないというか、慰めの言葉といった感じで。実際の紗音はそこできっぱり初恋を切り捨て、今度は譲治に思いを寄せます。クレルが恋の芽を引き受けたというのは、安田が紗音を慰める為に使った方便です。
 
 ……と、それぞれのパターンを考えました。私はボトルメールの執筆動機が「三位一体の謎に気づいてほしい」、なのだろうと考えています。この辺は多分普通に読み解いてもそうなりそうです。ボトルメール投擲の一番それらしい理由は、ep1最後に書かれた通り「この手紙を読んだ誰かに、私の考えた謎を解いて、苦悩を理解してほしい」というところだとは思いますが。気まぐれな手段に頼るのがベアトらしいですし。安田の悲しみとロマンの感じられる動機です。
 
 恐らく安田が執筆したボトルメールはep1と2のみで、他は偽書です(安田=幾子説の場合は微妙なところですが)。そしてベアトの可愛い部分が出始め、人間らしさが出てきたのは偽書であるep3以降です。(もしep1・2のベアトも可愛いだろ! という人がいたらごめんなさい)
 特にep2などは想い人であるはずの戦人を全裸にひん剥き首輪をつけるという、とてもじゃないけど恋愛感情など見えない展開になっています。最後には山羊にバリバリ食べられますし。
 安田のボトルメールの執筆動機は「自分の考えた最高の謎で、あの憎き戦人をぎゃふんと言わせたい」という空想を文章にして、ストレス発散がてら海に投擲した、じゃないかと思っています。悲しみもロマンもあったもんじゃない動機です。
 
 

■一人を三人に見せかけ、三人を一人に見せかける

 A・九羽鳥庵ベアトの子供として生まれるが、夏妃から突き落とされる。
 B・福音の家時代は病弱なため隔離されていた。
 C・6歳(実際は9歳)の時、右代宮家に来る。
 D・ドジっ子。
 E・熊沢から蜘蛛の糸の魔法を教わる。
 F・六軒島の魔女(立ち絵ガァプ)と出会い、友達になる。
 G・熊沢経由でミステリーに傾倒し始める。
 H・戦人と共通の話題を得て、初恋。そして約束。
 I ・2年後、自分宛てに来ない手紙で失恋を確信。
 J ・源次のヒントで隠し黄金を見つけてしまう。
 K・嘉音が雇用される。
 L・紗音、譲治と沖縄旅行。
 M・嘉音、朱志香の文化祭に参加する。
 
 三位一体でいけば、この一連の流れはすべて安田紗代ひとりの人生です。しかしnot三位一体説では、これはあくまで三人の人間の体験談が入り混じったものではないかと考えます。
 A、Bはひとまず置いておきます。まずCは安田なのか、紗音なのか。ボトルメール中では紗音ですが、クレルの告白内では安田で、紗音はあくまで同僚です。私の答えは「安田と紗音の二人ともCだった」です。「朱志香(当時8歳)のご学友として年の近い子供を二人雇用し、そのうち一人は実は隠し子」という状況です。幼すぎる雇用について、ウィラードは源氏の思惑だと解釈しましたが、実は朱志香が六軒島でも寂しくないようにという優しさも入っていたんじゃないでしょうか。この辺はそのまま源次の配慮でも、金蔵おじいちゃんなりの朱志香に対するツンデレでもどちらでもいいです(個人的に後者が好き)。
 Dは安田で、紗音は仕事ができるタイプです。
 Eはやはり失敗続きの安田に対して、熊沢がアイデアを出してくれたというところです。マスターキー君のキャラ付けは、後のFにも繋がります。無機物や現象に自己解釈を与える、というところに創作者の片鱗を感じさせます(この辺りは熊沢ではなく、福音の家の院長先生の考えを素直に聞き入れた結果でしょう)。
 Gは両方に当てはまり、安田も紗音もミステリーを好むようになります。『そして誰もいなくなった』を読む安田に対し、後半のページを破いて謎を解けなくすればそれは魔女小説と語ったのは、案外紗音だったのかもしれません。
 HとIは前述したとおり。
 Jは、安田です。紗音が見つけたとすると、三位一体と似た展開になりそうなので、ここでは安田と断言してしまいます。
 さて、ここで「九羽鳥庵ベアトの子供」はどちらなのか、という話です。
 
【ベアトの子供は安田】
 この場合AもBも安田になります。隔離については突き落とされたことで怪我なりあったのでしょう。源次が台湾ヒントを与えたのは安田で、黄金を発見した安田はベアト服を着て金蔵と対面します。
 
【ベアトの子供は紗音】★
 この場合Aは紗音ですが、Bは安田です。紗音が隔離されていた場合、安田は普通に福音の家で生活していたことになりますが、性格的に逆の方が腑に落ちます。突き落とされたあと怪我がそこまで致命的ではなく健康でもおかしくはありません。安田の隔離はそれとは関係のない理由(病弱?)です。
 この状態で黄金を発見したのが安田だとしたら、厄介なことになります。
 源次が台湾ヒントを与えるのは、ベアトの子供である紗音です。ですが近くにいた安田がそれを聞いていたり、紗音から又聞きして謎を解き、黄金を発見してしまいます。焦った源次は事情を説明して、安田にベアトの子供役を頼む。とか。
 
 その後K、嘉音の雇用があります。福音の家で紗音を姉のように慕っていた、とのことですが紗音が6歳までしか家にいなかったのなら、嘉音は5歳です。プレイ時もこの辺り疑問だったのですが、同一人物なら納得、そうでないなら……もしかしたら定期的に福音の家に帰省していたのかも。この考察での紗音は孤児院を嫌う理由がありません。
 
 Lは紗音、Mは嘉音、そのままです。しかしこの場合嘉音は九羽鳥庵ベアトと無関係なので、血統的な意味での禁忌には触れません。九羽鳥庵ベアトの死亡時期を考えれば、実の姉弟ということはなさそうです。嘉音が朱志香の好意を拒絶する理由は単に身分差や境遇の違いで、自分を卑下しているだけです。(だけ、とは書きましたが、嘉音にとってはかなり重要な理由です。)
 
 

■だいたいのまとめ

 ※今回、安田か紗音かの分岐点は★印の方を採用しております。
 病弱な少女安田は、実は当主の隠し子である紗音と共に右代宮家に勤めることになる。お嬢様の学友をする傍ら、使用人としての仕事に精を出すも、要領が悪くどうもうまくいかない。そんな時ベテラン使用人の熊沢から、魔法と称して生活の知恵を授かる。それをきっかけに少しずつ自信をつけていった安田は、時折空想の世界に走りながらも楽しく日常を過ごしていく。
 親友紗音と共にミステリーを嗜むようになり、紗音の方は同じくミステリーを好む当家の子息戦人に想いを寄せるようになる。二人の仲を応援する安田だが、家庭の事情で家を出た戦人は紗音のことを(多分)忘れてしまい、想いがすれ違ってしまう。安田の「恋の芽を引き受ける」という方便で吹っ切れた紗音は新たな恋に進む。
 安田は安田で自分の世界に没頭しはじめ、それを助長するかのように魔女の肖像画と碑文の謎が掲示される。源次が紗音にヒントを与えている場面に偶然出くわした安田は、謎を解き右代宮家の隠し黄金を発見してしまう。本来は紗音と金蔵の感動の再会を狙っていた源次だが、老い先短い金蔵のために安田に事情を話し、安田が九羽鳥庵ベアトの子供として口裏を合わせてもらう。紗音の出生の秘密を知ってしまった安田は複雑な気持ちで譲治との恋路を見守ることになる。
 ちょうどその頃、福音の家から新たな使用人嘉音がやってきて、朱志香が彼に好意を寄せ始める。源次をリスペクトする堅物の嘉音にとっては、お嬢様との恋など問題外。文化祭をきっかけに嘉音自身も好意を抱くが、考え方を変えられず面と向かって拒絶し、朱志香を傷つけてしまう。
 皮肉にも紗音の恋路は順調に進んでいく。紗音から「次の親族会議に求婚されるかも」という話を聞き、更に今年の親族会議に戦人が参加することを聞く。求婚当日に初恋の相手が現れ、どちらの相手も実は近親相姦に触れるという紗音の状況に、安田は一人で悩んでしまう。(なお当の紗音は戦人に対する未練はなく、近親の事実も知らない。)
 譲治との恋は堅実だが面白味がなく、安田にとっては初恋に瞳を輝かせる紗音の方が魅力的に思えた。何も知らずにやってくる戦人を憎く思う一方、ちゃんと約束を覚えていて紗音を掻っ攫うような展開を望む自分がいる。色々な悩みで頭の中がこんがらがる……。
 そんな頭の中のごちゃごちゃと自分の中の葛藤を整理する為に、安田はひとつの物語を書いてみる。実在する右代宮家関係者を登場させた自分なりのミステリー。そう簡単には解けないけれど、頑張ればちゃんと解ける推理小説
 
 そうだ、「紗音と嘉音ともうひとり」を使って同一人物トリックを使おう!
 この家の人間は誰も彼も金に困ってるし、黄金と爆弾をちらつかせたら共犯者になるに違いない!
 でも探偵役の戦人が勝つのは面白くないな、全編ベアト無双でいこう!
 やばい……イライラしてたのに段々楽しくなってきた。そういえば真里亞が日記で似たようなことしてたなあ。その気持ちわかるわー。
 
 書き上げた物語をワインボトルに詰めて、全部海に流してみた。お気に入りの推理小説でやっていたみたいに。
 さあ、もうすぐ親族会議の日。実際は私が期待するようなドラマチックな展開なんてないのはわかってる。私や源次さんたちが何も話さなければ、紗音の近親相姦には誰も気づかない。絵羽は反対するだろうけど、譲治はきっと紗音を連れて自分の道を歩むだろう。朱志香と嘉音もこれから少しずつ進展するかもしれない。案外、紗音がいなくなることで二人の間が縮まるかもしれない。
 
 ……と、このように考えています。もしこの後修正が必要になりましたら、わかりやすいように補足したいと思います。突っ込みどころ満載、粗だらけの推理ではありますが、ご覧いただきありがとうございました。
 
 
2019.09/02