どどめ色の真実

ジャンルばらばらの闇鍋ブログでございます。

【アニオリ】伝説のハンガー事件について

 

 長年続く超人気シリーズ『名探偵コナン』。この中でもネット上で特に有名なのが、『消えた凶器殺人事件』、通称ハンガー事件です。広まった原因というのが

「あの子……私にハンガーを投げつけたんです」

という殺人犯の語る動機。人を殺す理由としてはあまりにもお粗末なものです。

 この話は原作にはないアニメオリジナル回なのですが、一話完結型にも関わらず色々と詰め込まれた面白い回でもあります。ぶっちゃけ私はこの話大好きです。

 

※この記事には名探偵コナン第135話『消えた凶器捜索事件』のネタバレが含まれます。

※この記事は犯罪を正当化するものではありません。被害者の言動についても書いていますが、全面的に犯人が悪いと思っています。

 

 

 

事件のあらすじ

《事件前日》

 ベイカー街を歩いていた少年探偵団。歩美のお母さんの行きつけの美容室の近くで、若い美容師と店長の口論を目撃します。美容師は三井美香(被害者)、店長は五島緑(犯人)。他店の引き抜きにより美香は月曜までで緑美容室を退職すると言い、五島さんはそれを引き留めていました。美香の退職を惜しみ、一度は髪を切ってもらいたかったと言う歩美。それを聞いた美香は明日自宅にて特別にカットしてあげる、と言ってくれました。少年探偵団の同行も快く許可。いいお姉さんです。

《事件当日》

 約束の時間に美香のアパートを訪ね、そこで彼女の遺体を発見します。絞殺のようですが、痕が首の前にしかついていないという奇妙な状況、凶器も見つかりません。唯一の手掛かりは爪についた青色のビニールのみ。

 身元確認の為に雇い主である五島さんが呼ばれますが、まっすぐアパートには入らずどこかへ向かおうとしてコナンに呼び止められます。落ち込む歩美の頭を優しく撫でる手には絆創膏が……。

コナン「ねえおばさん。どうしたの? その絆創膏」

また、遺体を確認した後は悲しみを堪える素振りをして屋上に向かい、柵から身を乗り出して何かを探しています。

コナン「どうしたのおばさん。何見てたの?」

 遺体の傍にあったクリーニング後の服に足りないもの、爪のプラスチック片、屋上から見下ろした先のゴミ出し場から、凶器のハンガーをゴミに出して処分したことを察します。

コナン「こないだなんか、ハンガーがまとめて捨ててあってなんか勿体無かったな……」

 コナンの言葉で凶器がハンガーであること、広げたハンガーで後ろから引っ張ったせいで痕が前にしかつかなかったことに気づく目暮警部。そしていつの間にか五島さんが来ていました。

コナン「おばさんもゴミを見に来たの? よっぽど気になるんだね。さっき屋上から覗いてたし、最初あのマンションに来た時もこっちの方へ来ようとしてたもんね」

 収集されたゴミを広げて総出で探すも、それらしきものは見つかりません。

 帰り道、ゴミ出し場のカラス対策ネットを見たコナンは、凶器のハンガーがカラスの巣作りに使われたのではないかと考えます。少年探偵団総出で捜索した結果、照明塔近くのカラスの巣に青いハンガーを発見。プラスチック片の一致と先についた被害者以外の血により、それが凶器だと証明されます。

 証拠を突きつけられ絆創膏を剥がした五島さんは、諦めの表情を見せ、語り始めました。

五島「あの子……私にハンガーを投げつけたんです」

 

五島みどりが見たものは

 翌日の昼間(9時50分頃)、少年探偵団は美香の家を訪れています。美香と五島さんの口論は金曜、「来週の月曜で辞めさせてもらいます」という発言から考えるに、退職の三日前に店長に申告した形になります。しかもご丁寧に余所の店に移ることまで語っています。月曜まで予約で埋まるほどの人気がある美香が突然退職するとなれば、それ以降の予約客への裏切りにもなり、店の信用に大きく関わります。

 五島さんは給料面の改善を提案すべく美香の自宅を訪れます。美香が五島さんを払いのけた時、偶然持っていたハンガーが彼女に当たりました。私たち視聴者側からはそれが故意ではなく、美香自身も反省した表情をしていたことが分かります。しかし目を閉じていた五島さんからしてみればハンガーを投げられた挙句「私はやりたいようにやるの。もう帰ってちょうだい!」と背を向けられた形になります。

 

 「恩を忘れてハンガーを投げつけた」という五島さんの動機は、彼女の誤解に過ぎません(たとえそうであっても人を殺していい理由にはなりません)

 重要なのは、犯人視点だと「辞める直前に退職を告げられ、家に頼みにいったらハンガーを投げつけられ、背を向けて決別宣言をしながらクリーニングから帰ってきた服を整えている」状態だったという事です。

 この事件の根底にあるのは、少しのすれ違い。「ハンガーを投げつけられた」というのはあくまできっかけに過ぎません

 

 そしてコナンにはED後に少しの補足が加わります。歩美ちゃんにとっては美香さんも五島さんも「母の行きつけの美容室の優しい人達」でした。

歩美「あたし、まだ信じられない。二人ともあたしには凄く優しかったのに…」

哀「人間には色んな面があるのよ」

 どんなに良い人でも、ついカッとなって取り返しのつかない過ちを犯してしまうかもしれない。自分は大丈夫と思っていても、いざという時そうならないとも限らない。

 

"平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです。" 

                       ――夏目漱石『こころ』

 

長く広く愛される『名探偵コナン』 

  名探偵コナン、特にアニメ版は話の都合上頻繁に事件が起きます。前後編だとある程度伏線も張れますが、一話完結型だと20分の間に全てを終わらせなければなりません。日常の些細なことが普通の人を殺人に駆り立ててしまう……その一例として、『消えた凶器殺人事件』は分かりやすく面白かったと思います。

 また、135話は主要人物である灰原哀の正体が語られてそう間もない頃の話です。今でこそ普通ですが、初期の哀はかなり淡泊で冷徹な印象でした(私見あり)。そんな哀がコナンに協力する為目暮警部を連れてきたり、一緒にカラスの巣を探したり、歩美に慰めの言葉を掛けたり。そんな部分が結構微笑ましくて好きです。

 今回ハンガー回について御託を並べましたが、本来『名探偵コナン』はコナンの行動と推理を楽しく視聴するのが一番楽しいと思います。原作漫画は25周年を迎え、アニメも映画も安定した人気を誇っています。海外、とくにアジア圏でも人気があるようで、学生時代留学生と一緒にコナンを語ったことがあります。

留学生「私、知ってますよ! 阿笠博士が組織のボスなんですよね!」

 ……とまあ、国も世代も関係なく楽しめる作品って素敵です。

(西洋圏だと殺人現場の規制やらであまり人気がないとも聞きますが。)

 

 

《補足》でもツッコミどころ満載

 ここまで割と真面目に自論を語ってきましたが、この回がツッコミどころ満載でネタ的な意味でもインパクトを放っているのは否定できません。

 

・名前付きで登場するのが被害者と犯人だけ(他に容疑者がいない)。

・チャイムを鳴らしても反応がなく、鍵が掛かってないという理由で家宅侵入する少年探偵団。

・死体を見ても悲鳴を上げない少年探偵団。

・いつも通り無邪気な子供を装うコナン君。犯人視点すごい怖い。

・これでもかというくらい怪しい挙動をみせる五島緑さん。

・警察の調査を傍らから無言で見つめる五島緑さん。ナズェミテルンディス!!

・動機について語る際やたらとハンガー連呼する五島緑さん。普通に「恩をあだで返した……」等と説明しておけばここまでネタ扱いされなかったと思う。

・自白した後、目暮警部の怒りの言葉の後に見せた、悲しげな微笑。泣き崩れるでもなく自嘲気味に笑う。

 

 「ハンガーを投げられたせいで殺人を犯した」ともっぱら噂の135話、25分であっさり見終わりますので、興味が沸きましたら是非ご覧ください。